原画と朗読で綴るサイボーグ009の世界 〜海底ピラミッドの謎を追え!〜@C.C.Lemonホール

001(イワン・ウィスキー):藤田淑子、002(ジェット・リンク):置鮎龍太郎、003(フランソワーズ・アルヌール):桑島法子、004(アルベルト・ハインリヒ):中井和哉、005(ジェロニモ・ジュニア):江川央生、006(張々湖):龍田直樹、007(グレート・ブリテン):小野坂昌也、008(ピュンマ):緑川光、009(島村ジョー):神谷浩史、ギルモア博士:大塚周夫、ルメル星人めいむ(人魚):久川綾、スエーデンボルグ伯爵:田中秀幸、コール:レニー・ハート、ピエロ:三宅淳一宮原弘和日比愛子、平尾陽子

ジョーとフランソワが海中でみつけたサヤエンドウ型の閉じられた船。その中から人間が出てきたことから謎の組織へと繋がり、巨大なモンスターやオーパーツ、海底ピラミッドの謎へに迫る物語。

基本座っての朗読ですが、時折見せる役者さん自身の体を使っての動きやタイミングよく入る音響効果や照明効果で、シーンが耳に目に鮮やかに表現され、シーンによりステージ前方を覆うように降ろされる薄いスクリーンに映りだされる映像は、三次元と二次元の世界をクロスオーバーさせるかのように見えました。

普段は画面を通して声を届けてくれている声優さんが生で演技するその姿を見ることができ、そのセリフの一言一言や仕草や表情はステージ空間を支配する迫力に満ち、見ているうちに絵であるキャラクターと生身の役者さんの姿がシンクロしていきました。


イワンの知的さとあくまで赤ん坊であるという冷静さ、ジェットの自らの手で友を亡きものにした過去と「どこに落ちたい?」が印象的な友のために命をかけられる友情の厚さ、フランソワの永遠に生きる者のみに与えられた人を愛することの苦しみと一人の女性の弱さと強さ、ハインリヒの愛する女性を守れず生き残ってしまった自分への苦しみ、ジェロニモの大柄で寡黙ながらの優しさと自然への慈しみ、張々湖の料理の巧さ(と龍田さん本人出演でビックリ、麻婆ドッグCMw)、ブリテンの入魂のエンターテナーとユーモア、ピュンマの機械であるがゆえに女性の一人も幸せにできなかった罪悪と生身の肉体への渇望、ジョーの出生と静かなるリーダー性・・・。
今回ほぼ初めて知る009の世界とキャラクター達でしたが、昼夜みただけで各々が抱える人生の物語が伝わってきました。

人魚の役の久川さんが歌唱する場面では、その歌声はうっすらと光さす海中のようなやわらかい透明感とおだやかな波のゆらめきを思わせました。

伯爵役の田中さんは通路から登場するシーンがあり、扉を開けた時の後光により神秘的でとてつもない威厳を感じさせ、ステージ上ではなくあえて客席から演じるという位置関係が、時の旅人という、サイボーグ達とは異なる次元に生きる特殊な存在だということが強く印象に残りました。

また、ピエロという名で出演の若手の方々は、時に敵の一味、時に恋人、時に親友と、場面によっていろんな役柄を振り分けられており、シーンをより具体的に動きのあるものにしてくれたと思います。ジェットのために見事リンゴの皮を剥ききった三宅君でした。

人の心を置き去りにして急激な発展をとげる社会への警鐘と共に、キャラクターそれぞれに、人種差別問題、環境問題、政治問題など、地球上で私達人類が抱えている問題が投影されていて、
サイボーグ化され特殊能力と永遠の命を得て、それ故その者達しか分かり得ない孤独や苦しみを胸に秘め戦い続ける彼らだけど、
そんな苦しみや悲しみの柵を自ら放つ銃で破り、明日に立ち向かっていくというラストを見せてくれた彼らの姿は、
出身も性格も得意分野もバックグラウンドもみなそれぞれに違う個人だけど、勇気と優しさと力を合わせた絆があればどのような問題も乗り越えていけるのではないかという人類の希望や人間の可能性を、
舞台中に石ノ森章太郎先生の写真を織り込み振り返ることで、石ノ森先生のメッセージとして示してくれているように思えました。


今回の模様はスペシャルCD付きDVDで発売されるそうで、予約を受け付けていました。